組合費が高すぎる!?労働組合のお金事情のウラ側を現役執行委員が解説!

組合活動
組合費が給与引き落として支払われているようなイメージ画像

「毎月給料から組合費が天引きされているけど、そもそも何に使われているんだろう」

「けっこう高いするけど、組合費の平均ってどれくらいなんだろう」

「組合費を払いたくない場合はどうしたらいいんだろう」

労働組合がある会社でご自身が加入している場合、毎月けっこうな金額が組合費として給与天引きされているのを見て少しびっくりしますよね。

私も組合に出向するまでは、読者のみなさんと同じことを思っていました。

ですが、実際に私が組合専従として働く中で、組合費の目的や使い道などについて理解が深まる中で、きちんとした考え方に基づいて設定されているものだということが分かりました。

労働組合で執行委員を4年務めてきた私が、あなたの疑問にやさしく解説していきます。

<筆者 自己紹介>
地方のメーカーに勤めるアラサーサラリーマン。入社後は人事部に配属。入社6年目で労働組合へ出向し、現在まで執行委員(専従)を4年間務めている。組合内では、総務・会計・労使交渉などの業務を幅広く経験。

<この記事のポイント>

・組合費は主に組合役員の人件費活動費、組合員への助け合い活動(共済費)として利用されている

・組合費の平均は「約5,066円/月」

・組合費を払いたくない場合、組合を脱退することで払わなくて済む(ただし労使で「ユニオンショップ協定」を結んでいる場合を除く)

・過去に支払った組合費は基本的に返還されない

それでは順番に見ていきましょう!

組合費が高すぎる!そもそも組合費とは?何に使う目的で集めている?

組合費とは

組合費とは、「労働組合が労働条件の維持・改善(例:給与、労働時間、休日、休暇、福利厚生)を求め活動を行う際に使われる費用」のことを言います。

そもそも労働組合は、会社とは切り離された組織であるため、会社から資金援助を受けることはできません。

そのため労働組合の中で働く人が、労働条件の維持・改善活動のために外部の会議に参加したり、出張をしたり、研修をうけたりする場合のお金は、組合費からまかなわれています。

そういった組合費の使い道については組合が勝手に決めているわけではなく、その1年の活動計画とともに予算を立て、定期総会といわれる年に一度開催される労働組合の最高決議機関にて承認をもらっています。

また、不正な資金利用がないかをチェックするために、毎年1回社内外の監査機関に依頼をして、会計監査を実施している組合がほとんどです。

使いみち1.人件費

組合費の使い道で一番大きいのがこの人件費です。

人件費は、組合員の労働条件の維持・改善に取り組む組合執行部や、各職場から選出された組合役員などの給与・手当として支払われます。

そもそも、組合活動は業務ではないため、その時間に対して、会社から給与を支払うことはできません。
(労働組合活動をするための時間に対して会社が給与を支払うことは、経費援助となり、支配介入の不当労働行為として禁止されている)

2021年に連合総研が行った調査によると、組織規模別でみても、すべてのカテゴリで組合で一般支出のうち約3分の1を占めるという結果となっています。

組合における一般会計支出について、支出総額を 100 として、(中略)

最も支出が多いのは「人件費」(37.1%)である。

引用元:連合総研「労働組合費用に関する調査報告(2021年)」

使いみち2.活動費

活動費とは、組合活動を行う上でかかる費用の事です。

一口に活動費といっても、その中身は多岐にわたっています。

▽会議やイベントの参加費や交通費

▽組合の広報活動のため、機関紙(ニュースなど)を発行するための広告費

▽各職場や支部で職場集会などを行ってもらうための費用

▽組合員が休日を楽しむための余暇支援施策の費用

▽組合事務所の家賃や、事務所維持のための費用

などがあります。

組合によっては、活動費ではなく、別の名目で予算計上されていることもあります。

この活動費の内訳を見ることで、あなたの所属する組合が、何に重点を置いているのかを理解することができるでしょう。

使いみち3.共済費

共済費とは、組合員の冠婚葬祭などのイベントの際に、慶弔見舞金としてお支払いするお金です。

組合費の一部を活用して、組合員全員に共済をかけており、組合員同士の助け合いとしての意味合いがとても強いです。

例えば、結婚した際は「結婚祝い金○万円」、子どもが生まれた場合は「出産祝い金○万円」、ご家族に不幸があった場合は「弔慰金○万円」、といった形で組合員へ見舞金が支払われます。

また、こちらの見舞金は会社からもらえる見舞金とは別で受け取ることが可能です。

組合員とその家族の幸せのために働く、労働組合の活動の柱の一つといっても過言ではありません。

使いみち4.上部団体費

上部団体費は、その組合が所属している上部団体に支払うお金のことを指します。

一般的に、企業の労働組合は、単独で活動することは少なく、その業界全体をまとめる上部団体と業界全体で連携をとって活動することがほとんどです。

例)

自動車業界 → 自動車総連

小売・流通業界 → UAゼンセン

上部団体費として納めたお金は、企業組合と同様、上部団体で働く職員の人件費や活動費として使われます。

その代わりに、業界全体の情報収集や人材交流、上部団体が保有する保養施設を組合員が使用できたりなどのメリットを受けることができます。

使いみち5.ストライキのための準備資金

正確には、罷業(ひぎょう)資金といいますが、いわゆる労働組合がストライキを行うときに使用するお金のことです。

組合によっては、「闘争準備資金」「闘争積立金」「行動準備資金」など、呼び名が異なります。

予算のうち一定金額を毎年積み立てておき、会社との交渉が決裂し、ストライキを行った際に組合員全員の給料を補填するために使用されます。

(組合がストライキを行った場合、その期間の給料は会社から支払われない)

本来は使われないことに越したことはないお金ですが、万が一の場合に備えて必要なお金とも言えます。

組合費が高すぎる!組合費の平均はどれくらい?

2021年の連合総研の調査委によると、平均は「5,066円/月」 となっており、基準内賃金に占める割合は平均1.6%となっています。

正規雇用の組合員一人当たりの月額組合費(加重平均)の平均は 5,066 円である。

引用元:連合総研「労働組合費用に関する調査報告(2021年)」

組織人数別の分布図で見ると、組織規模に関わらず、半数以上が「4,000 円以上 6,000 円未満」に集中しています。

連合総研実施 「第 20 回 労働組合費に関する調査報告」 より

組合費の金額の決め方は、 ①毎月一定額とする定額法 と ②組合員の賃金額に対し一定率とする定率法の2つです。

また定率法の場合、賃金が高い組合員の金額が大きくなってしまうため、一定の金額で徴収上限を設けている組合もあります。

組合費が高すぎる!払いたくない場合はどうしたらいい?

組合費を払いたくない場合は、労働組合を脱退することで払わなくてもよくなります。

但し、ユニオンショップ制を労使で結んでいる場合、「組合の脱退≒会社をやめる」こととなってしまうので、会社を辞めたくない場合はおすすめしません。

労働組合に加入しないことで下記のデメリットをこうむる可能性も考えられます。

労働条件の改善が期待できない

冒頭にも書きましたが、労働組合の役割は組合員の「労働条件の改善」です。

組合員が不当な長時間労働や残業代の未払いなどに苦しんでいる場合、労働組合は会社に改善を要求することができます。

一個人で会社と交渉するのは難しいですが、労働組合であれば、所属する組合員の多くの要求として強い説得力と影響力を持って会社と交渉を行えるのです。

労働組合に加入していなければ、そもそもこういった交渉時におけるメリットや、交渉後して勝ち取った結果についても受けることができません。

冠婚葬祭のライフイベントの際に、組合からのお金がもらえない

労働組合に加入していないと、組合員の冠婚葬祭イベントの際に組合から支払われる共済金(見舞金)を受け取ることができません。

組合費の使いみちのパートでもご紹介しましたが、共済金は「組合員同士の助け合い」が根底にあるためです。

一方で組合を脱退することで、それまで支払っていた組合費を払わなくてよくなるので、金銭的な面だけで見ると、プラスマイナスゼロといえるかもしれません。

部署を超えた交流が少なくなる

労働組合は、部署や役職を問わずいろんな社員が活動しています。

組合活動を通じて、普段はなかなか交流することのない部署の人たちとも親しくなる機会があり、このような交流は会社生活を通じて役立つ場面が少なくありません。

そのような交流の機会を得られないことは、長い目で見るとデメリットといえるかもしれません。

組合費が高すぎる!支払った組合費はいつか返還される?

支払った組合費については、原則返還されません

組合費の返還については、基本的には各組合の規約の中に記載されているはずですので、確認してみると良いでしょう。

組合によっては、繰越金が一定の水準を超えた場合、組合費を組合員に還付するとしているところもあるようです。

ただし、基本的には上記の通り返還されないことの方が多いので、組合が実施しているイベントに参加したり、福利厚生施策(優待施設やチケットの割引など)をどんどん利用していくのがおすすめです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

普段何気なく徴収されている組合費ですが、その目的や使いみちが分かるだけでも、納得性が高まるかと思います。

労働組合に入っているという安心感を得るとともに、組合が実施しているイベントや施設割引などのメリットをうまく活用していくことが大事です。

また、組合費について疑問がある場合は、労働組合に直接聞いてみるのもよいでしょう。

読んでいただいてありがとうございました!

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